黒部横断 さらさら越え 2日目後半 完結

2日目 後半

ザラ峠をドロップするといきなりガリった。汗
薄い雪の下に岩が隠れていたようだ。
しかし、急斜面でスキーを脱ぐのも苦しく我慢してそろそろと滑り降りた。
道具を大事にするみさごさんはさぞかし心苦しかったことと思う。
50mも下ると岩はきれいに埋まり、岩の問題は解決した。
しかし、傾斜がすごい。そして雪面もまだ固い。
だまになった雪やデブリがあり、滑れる場所も制限されている。

横滑りや斜め横滑りを駆使して滑るというより慎重に高度を下げていく。
ふとみさごさんを見上げるとこれまた慎重に確実に滑り降りてきていた。
さすがは歴戦の山スキーヤーだ、安定感がある。



標高2,000m付近の傾斜が緩くなる場所で一息。
見上げると岩稜の迫力がすごい。
この下部は傾斜もほどほどで雪崩も落ち着きフラットで幅広いまさにスキー適地だ。
歓声を上げながら一気に滑り降り刈込池下部の砂防ダムまでは一気に進むことができた。

そこからは完全に下山モード。
砂防ダムを飛び降りたり、わずかに登り返したりしながら下りていくが、ストップスノーの雪質でなかなかすすんでくれない。
雪に埋もれた工事用道路を見失わないように降りていき標高1,100mあたりで下山ルートを見失いかなり迷ってしまった。
左岸をそのまま進めばよかったものの、先が崖に見えたことから橋を渡って右岸にわたってしまい、そこで1時間近くロスしてしまう。
このあたりは地形図に書いていない工事用道路があり、事前に空中写真ではルートを確認していたのだが印刷してきていなかった。
電波もなく空中写真を確認することもできずに焦ってしまった。。。
左岸にもどり様子を見るとちゃんと下りられることがわかり、そこからは電波も届くようになりほぼ迷うことなく進むことができた。

スキーを脱いだり履いたりしながら徐々に下っていき、立山の2km手前ほどで雪がつながらなくなったので担いで歩く。
ついに立山の街が見えた時は感動モノだった。
18時前頃に無事下山。
12時間の行動時間だった。
片付けをしているとソロスキーヤーさんも下山してきた。
話を聞くと今までで最悪の雪質だったようで、下山もわずかにルートミスをして苦労したようだ。
駅まで送ろうかと提案してみたが、歩くということでここでお別れした。
ほんとうにありがとうございました。

片付けを終えたが予想よりかなり遅くなってしまった。
大町へ車を回収し、そこでみさごさんと別れ、帰宅は日が変わったころだった。
眠くなるかと思ったがアドレナリンが出ているのか不思議と眠くならなかった。


下山中は2度とやらないと思っていたが、(予想通り?)翌日には楽しかった思い出しかなくなっており、また行きたい気持ちでいっぱいだった。
今度は別ルート?立山側から?などなど想像するのが楽しい。
本当に充実した山スキーで、世界が広がったと思う。

パートナーのみさごさんには感謝しかない。
ぜひまたご一緒したいものだ。

みさごさんの記録はこちら

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ザラ峠からの下り。深い谷に吸い込まれそう

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下部の広い斜面をすべるみさごさん

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天気も良く快適だ

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振り返ると迫力の岩稜帯が

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砂防ダムを越え

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トンネルの脇を通って

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林道を滑り


擁壁をよじ登り


トンネル内も歩き

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最後はスキーを担いで立山に到着


おつかれさまでした

黒部横断 さらさら越え 2日目前半

2日め前半

黒部の夜は風が強いわけでも寒いわけでもなく、快適快眠だった。
途中にふと目が覚めた時、テントのベンチレーターから外を見ると満月が輝いていた。
明日も天気になるだろう。

4時に起床しゆっくりと準備をする。
余らせても仕方がないので食事をしっかりと食べ、ゆっくりと片付けて5時過ぎにテントを出た。
周りはすでに明るく、ヘッドライトは不要だった。
雪面は固く凍り付いているが寒すぎるわけでもない。
マイナス2~3℃といったところだろう。
風もほとんどなく、今にも晴れそうな薄曇りで気分も晴れやかだ。
準備をしていると隣の強者スキーヤーさんも起きてきた。
どうやら寒くてあまり寝られなかったらしい。
快適さと軽量はトレードオフと割り切っているようだった、さすがである。
ルートもほとんど一緒の予定だが、ザラ峠からさらに少し登った沢を滑る予定とのこと。

予定通り6時には準備を完了し、今日はこちらが先行して歩き始めた。
まずは、ヌクイ谷の緩斜面のゆるゆると登っていく。
ほどなく刈安峠への直登沢へ到達し進路を右へ、刈安峠を目指す。
こちらはかなりの急斜面でまだ雪面も固く、シールの直登限界でアイゼンに履き替えての登行に装備変更。
アイゼンが固く凍った雪面に小気味よく食い込み、高度をどんどん上げていく。
朝日も差してきて、気持ちが良い。
8時頃に刈安峠(1,880m)に到着した。

刈安峠から中ノ谷への斜面を確認すると、雪面は固いがスキーで滑られないほどでもない。
雪もちゃんとつながっていて、途中に崖のような場所もない。
予定通り中ノ谷に下降することにした。
なるべく高度を保ったままザラ峠方面にギルランデ気味に降りたいところだった。
偵察を終え、滑降準備をしているとソロスキーヤーさんが追いついてきた。
我々がアイゼンに履き替えたところもシール+クト―で登り切っていた。やはり只者ではない(もうわかってるけど)。
談笑しながら準備し、先に準備を終えた我々がまず滑り始めた。

ギルランデ気味に下りいくつかの小尾根を越えていくと、途中のルンゼ状で滝が顔を正していた。
そこをスキーで突破は難しいと判断し、手前のルンゼを下降。
雪面が固い急斜面を横滑りを駆使して下降し、中ノ谷の1,800m弱の地点に降り立った。

中ノ谷は広い雪原となっていて、沢は完全に埋まっている。
斜面もシール登行にはちょうど良いくらいだ。
ザラ峠までの標高差は550mほど、気楽に登れる標高差だった。
谷の上の方を見るとソロスキーヤーさんが滑り降りてきていた。
どうやら我々よりも高度を下げずに滑ることができたらしい、やはり只者ではない。笑

緊張感のあるような傾斜でもないのでみさごさんと談笑しながら淡々と登る。
登り始めてすぐにスキーの下りとレースを発見。
トレースは新しく昨日今日のものだ。
中ノ谷を滑るということは立山側からの山スキーヤーだろうか?
中ノ谷は傾斜も適度で雪面も平、さぞかし気持ちよく滑れたことだろう。
中ノ谷は対して難しいところもなく予想よりも早い11時前に登りきることができた。

ザラ峠ではスキーをザックに取り付けているソロスキーヤーさんに追いついた。
獅子岳の裏の沢を滑る予定らしい。
ここでお別れになるかもしれないとしっかりとあいさつして見送った。
さっそうと登っていくソロスキーヤーさんは本当にかっこよかった。

ザラ峠は過去に2回、いずれもトランスで通っただけだが、ここまでくると少しホッとするいい思い出の場所だ。
2016年にはみさごさんのお仲間にエールをもらったことをはっきりと覚えている。
冬にまた来るとは思ってもいなかった。
景色を堪能し、滑降準備を取る。
滑り出しはかなりの急斜面でデブリもおおく、雪面も西向きと緩み切っていないので固そうだ。
緊張感をもってドロップする。

つづく

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テント撤収前に一枚

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6時過ぎに出発

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歩き始めるとすぐに太陽が昇ってきた

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刈安峠への登り。見た目以上に急だ

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アイゼンに履き替えて残り200mを登る

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刈安峠到着

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一度下って中ノ谷を登る。振り替えるとこの景色

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ザラ峠をめざして登る。もうちょっと

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ザラ峠到着!

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滑降準備完了!

黒部横断 さらさら越え 1日目後半

1日目後半

針ノ木峠でしばし景色を味わった後はいよいよ滑降だ。
いつもそうだが、登って確認してきた斜面ではない斜面を滑り降りるときは雪質も地形もわからないし緊張するものだ。
針ノ木谷への斜面は見通しが良く難しいところがなさそうなので、躊躇なく滑り降りることができた。
日当たりが良い南斜面は適度に緩んでいて重雪だが気持ちよく滑れた。
心配していた荷物の重さも問題なく、快適に谷へ滑り込んだ。

標高1900m前後、針ノ木谷本流の数百m手前から川が顔を出していたので給水してからスキーを脱いでへつったり渡渉したりした。
針ノ木谷本流へ到着。
ここからは緩斜面のアップダウンやデブリの乗り越え、渡渉などの連続で思ったより時間がかかる。
そこを先行するスキーヤーは迷わずほぼベストのルート取りで滑っており、やはり只者ではない。
前半はスキートレースをあまり気にせず滑っていたが、後半からはトレースと足跡を探しつつ滑るようになった。

針ノ木谷の中間点辺りでは子熊に遭遇した。
野生の熊を直近で見るのは(ヒグマを含めても)初めてだったが、可愛い子熊だったことと慌てて逃げていったので怖いとは少しも思わなかった。
もちろん近くに母熊がいないかは警戒したけれど。

子熊の遭遇後あたりから小トラブルが頻発する。

まずは自分のビンディングが少し緩んでいるようだったので、トルクスレンチで締めなおそうとしたら、トルクスレンチのビットが折れるというトラブルが発生。
信頼のビクトリノックス製ツールに付属していたビットだったのでまさか折れるとは思わず、替えももちろんない。
幸いトルクスレンチ以外のところをしっかりと締めたらガタは出なかったので大問題にはならなかった。

続いてみさごさんが渡渉の際に、なぜかストック(ウィペット)のポール部先半分ががなくなるということが起こった。
おそらくフリックロックが外れて脱落したのだろうが、二人とも見てもおらず気が付かなかった。。。
しかも不幸なことに見つけられず、渡渉時ということで沢に落としてしまったのだろうと結論。
沢の中を目を凝らして探してみるものの見つからず、みさごさんは今後ストック1本で行動することとなった。

そんなトラブルを乗り越え(?)ながら黒部川に15時半ごろに到達。
まだ日は高く明るかったし、当初の計画ではもう少し進んだところでテント泊のつもりだったが、針ノ木谷の非効率的な進捗やトラブルなどで気力が萎え、黒部川の畔で幕営することにした。
先行している只者ではないスキーヤーも黒部でビバークといっていたので話をしてみたかったということもある。
最後の黒部川渡渉はもともとスキーは濡らさないためにブーツごと脱いでサンダルで渡渉するつもりだった。
サンダルに履き替えて渡渉ポイントをさがしていたが、なかなか浅く渡渉に適したポイントが見つからず彷徨ってしまった。

そうこうしているうちに泥に足を突っ込んだ拍子にサンダルが脱げ、そのままサンダルは流されてしまった。。。
みさごさんは「まだまにあう!」と叫んだが、重い荷物を背負った自分が追いつけるわけもなく、目の前をサンダルが通り過ぎていった。。。
その後は素足で渡渉ポイントを探すがどこも膝上以上でなかなか浅瀬がみつからない。
足先の冷たさが限界になる前に渡渉してしまえ、と膝上の場所で渡渉することにした。
思ったより水圧が強く、ストックも流されそうになるが、大きな問題なく渡渉完了。
股下まで濡れてしまったが、自分としては予想通りといった感じだ。
みさごさんも同様に渡渉し、やっと黒部川を横断した。

その後は足をキレイに洗い幕営適地の雪原へ。
時間は16時半、1時間近く渡渉で苦労していたことになる。笑

先行スキーヤーさんの近所に幕営させてもらうことにして、ご挨拶し話を伺うと黒部横断は毎年のようにされているそうだ。
装備も快適さを犠牲に軽量化仕様でツェルト泊の猛者だった。
世の中にはすごい人がたくさんいるものだ。

テント設営後はテント内で持ち込んだ食事やお酒、つまみを楽しむがなんだかテンションが上がらず、珍しく2人そろって静かな時間を過ごす。
針ノ木谷の非効率な進捗でやや気落ちしてしまったのかな。
翌日は6時出発で刈安峠-中ノ谷-ザラ峠経由の立山と決め、19時過ぎには就寝した。

つづく

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針ノ木谷へ滑りこむみさごさん

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と、自分

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黒部の雪解け水、美味

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針ノ木谷を進む

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目指すはあの山の麓

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第一トラブル発生地点、ビンディング調節中

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第二トラブル発生地点、ここでみさごさんストックの先を紛失

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木の橋を渡って雪壁をよじ登る

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黒部川が見えた

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ここからがまだ遠い、スキーを担いで

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川を渡り

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雪原を歩いて

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黒部川本流を渡らねば

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渡渉中のみさごさん

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テント設営完了

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ご飯を食べて


ビールで乾杯









黒部横断 さらさら越え 1日目前半

準備編からの続き

扇沢のゲート前につき、なんだかんだ準備をして6時20分ごろに出発した。
まずはスキーとブーツを担いでサンダルで歩きだ。
今回は久しぶりに75リットルのザックを使うことにしたので荷物に余裕があり、その分重い。汗
ザックほぼ一杯にスキーとブーツの重量が加わり推定25kgオーバーの重量級ザックになってしまった。
この重量感は久しぶり、かといって歩きやすい舗装路では手を抜くきにもならないで、ゲートから扇沢駅までの6kmぐらい、標高差400mの登りでかなり汗をかいてしまった。
途中で4人組パーティに追いつき少しだけ会話を楽しんだ。

扇沢駅でようやくスキーを使える。
到着と同時にソロの山スキーヤーは出発していった。

扇沢ではゆっくりと準備した。
まだ先は長い、スキーブーツを履きスキーをセットして8時半ごろから歩き始めた。

ルートとなる籠川本流は傾斜が緩かったが、針ノ木雪渓に入ると急激に傾斜がきつくなる。
順調に高度を上げて行ったが最後の標高差200m、雪質がザラメから乾雪に変わるところで盛大にだんご(シールの裏にだんじご状にゆきがくっつくこと)が発生。
しかも表面の下はクラストしていて非常に登りにくい。
クトーを装着してもだんごのせいで雪面に刃が届かない。
最後の一登りにとても苦労して12時過ぎにようやく針ノ木峠に到着。
先行するソロの山スキーヤーは先に出発しており、この時点でただものではない(そもそもソロの時点でただものではないのだが)を悟った。

針ノ木峠は快晴、微風でとても眺めがよい。
槍ヶ岳の鋭鋒のはっきりと見えた。
昼食をとって滑降準備をしていざ滑降だ。

ここを滑りだすと、もう登らないと戻ってこれない。
日本の秘境に突入となる。

続く

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ゲート前にて、ザックが大きい

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朝日を浴びながら、まずは舗装路を歩く

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2時間弱かけて扇沢に到着、準備をするみさごさん

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デブリを見ながらまずは籠川本流を詰める

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針ノ木雪渓に到着、これからが本格的な登り

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針ノ木峠が見えた(ここから苦労した)

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厳しい登り

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雪面はてっかてかである

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苦労のかいあって針ノ木峠に到着

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滑降準備を整え記念撮影

黒部横断 さらさら越え 準備編

山スキーでの黒部横断。
これをやることになったきっかけは今回のパートナーのみさごさんから誘われたことだった。
先シーズン、なにか長距離の山スキーをやりたいね、という話をしているときにみさごさんからさらさら越え提案されたのだ。
その当時は黒部横断をスキーでやるなんて発想すらなく、そんなことできるのか、とも思ったが調べてみると横断の記録はけっこう出ていた。
中には山岳スキーレースの装備でワンデイ、なんていうとんでもない記録もあった。
ルートもそこそこバリエーションがあるようだった。
これで計画が具体化した。

我々はそこまでスピードを求めていない。
安全安心を第1にテント泊、クラシックルートのさらさら越えを選択することにした。
さらさら越えとは戦国武将の佐々成政が厳冬期に黒部横断を横断したと言われる伝説のルートで立山ーザラ峠ー中ノ谷ー刈安峠ー黒部渓谷ー針ノ木谷ー針ノ木峠ー扇沢がルートと言われている。
登り下りの距離を考慮して、扇沢から入山することにして時期は残雪期の3月、とまで決めていた。
が、昨シーズンはお互いの都合がつかず今シーズンまで計画を温めておくことになった。。。

今シーズンの山スキールートの最大目標としてしていたが、なかなか都合があわず先週末にようやく行けることになった。

金曜日の夜に富山に集合して立山駅に車をデポ、そこから3時間かけて扇沢のゲート前に移動して、土曜日の朝6時過ぎに扇沢を出発した。
扇沢ゲート前にはソロで黒部横断をする山スキーヤーと爺ヶ岳を目指す4人パーティが準備していて、我々は最後に出発した。

続く