PTL7日目(8/30)

最後の難所といわれる「Mont Buet」へ向けて出発だ。
「Mont Buet」までは3つのピークを越えたり巻いたりしてパスする必要がある。
すでに日没しており、ライトをつけての行動となる。
「Rufuge du Vieux Emosson」を選手やスタッフ達に見送られて勇ましく出発する。
が、小屋から見えるところでルートロスする。汗
小屋のお姉さんが「絶対そっちに言っちゃダメー」と叫んでくれた。。。恥ずかしい。
正規ルートに戻り、しばらく林道歩きをつづけると先行チームのライトが見えた。
山は満月の明かりに照らされて輪郭ははっきりと見える。
その時は「あんな急そうなところ歩くのか」といった感じだった。

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遠くに見えるライト

林道が終わりトレイルに入る。
急斜面をジグザグに登っていくと、徐々に傾斜が増してくる。
傾斜がどんどん急になりわずかな足場、しかも斜面下方に向かって傾斜した足場を進む。
鎖などの補助はなく、ルートもわかりにくく、浮石もある。
下は闇夜で見えない。
落ちたらよくて大怪我、下手したら命にかかわる場所だ。
ここでamatchとトニーは完全に怯んでしまった。
あまりの恐怖に気持ち悪くなりながら、なんとか最初のピーク「Cheval Blanc」に23時前にたどり着く。
amatchとトニーは「山の素質ない」「これ終わったらもう山やめる」などと本気で言っていた。

「Cheval Blanc」を過ぎ、先の山を見ると、月明かりに照らされる山はまたとてつもなく大きく急だ。
でも、もうさっきの登りを闇夜で下ることのほうが難しい。。。
かといって3000m級の稜線であと7時間、夜が白むまで待ち続けることもできない。
意を決して先へ進む。

「Mont Buet」までの残りの2つのピークは巻くようだった。
ここは結果的に特に問題なく通過することができた。

そして最後の「Mont Buet」への登りだ。
これはとてつもなく大きく、急な崖だった。
(日中だったらたいした事ないのかもしれないが)ナイフリッジ上を鎖を頼りに登る。
同時行動は避け、安全な場所まで進むまで残りの2人がルートをライトで照らしながらの登りとなった。
またも気持ちが悪くなる。
しかし、「Cheval Blanc」よりさらに急な斜面だったが、斜面が近いことと鎖がしっかりしていたので恐怖感としてはまだましだった。
しかし、斜面的にはこちらのほうが厳しく、落ちたら助からないだろう。
風邪も弱く天気が良いのが、なによりチームなのが救いだった。。。
チームでなければ、登る気力が沸かなかったかもしれない。
急な崖斜面を乗り越えたときに思ったのは、「早く宿に帰りたい」だった。
(写真撮る余裕なし)

AreteMtBuet.jpg
(参考)Mont Buetの稜線 (http://hep.phy.syr.edu/)

mont_buet_north_ridge-759843.jpg
(参考)鎖場 (http://fionachappell.blogspot.co.uk/)

急斜面を登りきり、後は緩い斜面をひと登りすると「Mont Buet」の頂上だった。
ここで記念撮影をし、ちょっとだけ休んで下る。

DSCF4992.jpg
Mont Buetの頂上にて

しばらくは順調に下るが、カールの巨礫帯に差し掛かると道が不明瞭になる。
しかもこれまでで一番とびっきりの不明瞭さだった。
ヘッドライトであたりを探すも道らしきものはない。
ケルンを頼りに進むが、だんだんとどれもこれもケルンに見えてくる。
ようやく印を見つけても、次の印がわからない。
車並みに強力なハンドライト(KLARUS XT2C、580ルーメン!)であたりを探し、ようやくなんとか軌道に乗ってくる。
道が不明瞭なときはいくら明るくてもヘッドライトよりハンドライトのほうが有利だと(前々から気付いてはいたけど)確信し、ハンドライトの明かりを頼りに下っていく。
徐々に道らしくなって来るが、浮石だらけで何回足をぶつけたかもわからない。
気持ちも焦り、どんどん消耗していく。。。
だいぶ下ってようやく順調に進めるようになったところで、下方に明かりが見えた。
小屋だ!
「Rufuge de la Pierre à Bérard」が見えた。
どうやら人が外で待っててくれている!
はやる気持ちを抑え、下る。

DSCF4986.jpg
ハンドライトで道を探す

3時半頃に小屋に着くと先行チームが出発するところだった。
少しだけ挨拶をして小屋の中に入れてもらう。
寝るか?と聞かれたが、このまま行くと断り、簡単な食事(スープとパン)を頼んだ。
すぐに出発するつもりだったが、小屋の暖かさと難所を越えた安心感からゆっくりしてしまい15分の仮眠を含めて50分ほど滞在した。
出発時にこの先のルートについて教えてくれた。
「あと16km。
1つ目のコルまでは直登し、そこからトラバース気味に2つ目のコルへ向かう。そこまでは簡単だ。
2つ目のコルの下りは気をつけろ。」
とのことだった。
「気をつけろ」って、、、どれぐらい危険なんだ。。。と不安になる。

がぐずぐずしても仕方ないので出発する。
が、進んでみると1つ目コル「Col de Bérard」までも踏み跡もないようなルートでちっとも進まない。
ちっとも進まないのでamatchは途中で眠気から集中力を切らせてしまい、5分仮眠をお願いして寝かせてもらった。
コルの手前にはカチカチの雪渓が残っていて、大きく迂回が必要などそんなに簡単なものではなく、嫌な予感がする。

1つ目のコルを越える頃、ようやく長かった夜が明けてきた。
コルからの下りやトラバースもやはり踏み後程度で進まない。
気力がどんどん削られていく。。。
これで「簡単だ」なら「気をつけろ」はどうなっているのか不安でたまらない。
2つ目のコル「Cols des Aiguilles Crochues」は遥か彼方に見える(実際はそうでもなかったがそう見えてしまうほど気力が消耗していた)。

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夜明けのトラバース斜面

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遥かに遠いコル

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トラバース斜面を進む

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コルはまだまだ先

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ガラ場のトラバース(サコさん)

かなりペースダウンしながら、それでもなんとか「Cols des Aiguilles Crochues」に近づくと、「Luisin」で動画を取ってくれていた「ゆうじんさん」が現れ誘導してくれた。
そしてとうとう最後の登りを終え「Cols des Aiguilles Crochues」に8時過ぎに着くと、リフトの終点が見えた。
ここでようやく気力が沸いてきた。
ここからの下りも「ゆうじんさん」はマーキングをしてくれているらしい。
とてもありがたい。
そのマーキングに従い下る。
マーキングさえあれば、下りはさほど難しくなかった。


急斜面の下り(トニー)

リフト終点につき、装備を整えがてら小休憩をする。
あと8km下ったら、この旅も終わりだ。
ここでここからはたぶん走れることを告げ、最後をどうするか聞く。
正直、3人とも最後の夜のルートにこてんぱんにやっつけられていた。
体力的にも身体的にも問題なかったが、最後の最後であの登りと進まないルートの組合せで気力が尽きかけていた。
だが2人とも「けじめだから走る」と言う。
なんて強く格好いい奴等なんだと、このチームでよかったと本気で思った。

リフトの終点からUTMBルートの合流点までの約2kmをゲレンデ内の道を下る。
合流点「La Flégère」には9時半過ぎに到着する。
ここはUTMBの最終エイドでもある。
ここで最後の補給をする。
(実は合流するともっと歓迎されるかと思っていたが意外と他の選手に溶け込んでしまい、むしろなにあなた方?という感じだった)

ここから最後の6kmの下りだ。
トニーを先頭に走って下る。
トニーもサコさんも元気そのものでどんどん下り、UTMBの選手たちを抜いていく。
この2人の底力に感嘆し、やっぱりこのチームでよかったなあとつくづく思った。
下りの途中にトニーが何かの拍子(鼻血だったかな?)で止まったので、最終関門の「Champex」から持っていた日本の国旗をポールにくくりつけた、もう片方をしまった。
この区間は応援のために登ってきてくれている人も多く、日本人の方もいた。
徐々にコースがにぎやかになっていく。

シャモニーの直前で、自分は国旗を去年もってゴールしたから2人に譲るというと、トニーが持つことになった。
ここでポールを持つ(ポールあった方がPTLっぽいという意見)持たない(ハイタッチとかゴールのとき邪魔)で議論になったが結局全員しまった。笑
そしてシャモニーの街へ。

シャモニーの街はお祭りムードだった。
応援のみんなが選手に惜しみない賞賛を送っている。
我々3人がPTLだと知ると(欲目に見ると)一際大きい賞賛があったと思う。
amatchはもうちょっとゆっくり走りたいという気持ちと、元気にゴールしたいという気持ちがせめぎあっていたが、2人は(ウイニングランにしては)なかなかのペースで走っていたので必然的に合わせた。笑

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シャモニーに凱旋

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ウイニングロードを走る

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国旗を持つトニー

そしていよいよ3人並んでゴールへ。
ゴールへ近づくと、まさかとは思ったが我々のために曲がかかり、アナウンスが始まった。
ずっと我々と一緒に回ってくれていたスタッフがゴールで待っていてくれるのも驚きだった。
3人で手をつなぎ高く上げながらゴール。
まずスタッフさんたちと抱き合う。
言葉はいらなかった。
スタッフの中心人物だったCaroleさんは泣いていた。
そしてトニーを見ると、まさかとは思ったがあのマイペースのトニーの眼にまで涙があった。
自分ももらい泣きしそうになったが、トニーとサコさんと抱き合った。
そしてスタッフに促されゴールゲートの下に3人並び、写真を撮っていただいた。

ゴール後へ続く
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